04 業種の選択 ― なぜ「脱毛」だったのか

私は、妻が転職を考えていた時から、脱毛に関わる仕事を勧めていた。

なぜ、脱毛だったのか。

私の中には、当時から一つの目標があった。

「いつか妻が自分で起業すること」

妻の転職も、私にとっては単なる転職ではなかった。

すべては、その目標に向けた準備だった。

妻と「脱毛」の相性

まず考えたのが、妻自身の経験や特性との相性だった。

妻は看護師である。

看護師として働いてきた経験があるため、人の身体や肌について、医学的な知識をベースに理解することができる。

そして、もう一つ大きいと思ったのが、

「他人の身体に触れることへの抵抗が少ない」

ということだった。

脱毛は、当然ながら、お客様の肌を見て、触れて、施術する仕事である。

腕や脚など、普段から見えている部分だけではない。

VIOなど、いわゆるプライベートゾーンを見て、触れて、施術することもある。

普通に生活していれば、他人のプライベートゾーンを見ることも、触れることもほとんどない。

人によっては、大きな抵抗を感じる仕事だと思う。

しかし、妻は看護師として人の身体に接してきた経験がある。

もちろん、医療行為と美容脱毛はまったく別物だが、「人の身体に触れる」ということに対する心理的なハードルは、一般的な人より低いのではないかと思った。

これは、脱毛を仕事にする上で大きな武器になる。

だから私は、

「妻のこれまでの経験と、脱毛という仕事は相性が良いのではないか」

と考えた。

脱毛には一定の需要がある

次に考えたのが、需要だった。

どれだけ妻に向いていたとしても、お客様がいなければ商売にはならない。

そこで私は、脱毛というサービスそのものについて考えた。

私の感覚では、脱毛は日本人女性にとって、すでに**「美容のインフラ」に近い存在**になりつつあるのではないかと思った。

医療脱毛、美容脱毛を問わず、脱毛を経験したことのある女性は珍しくない。

もちろん、すべての女性が脱毛を必要としているわけではない。

それでも、これだけ多くの人が利用しているサービスであれば、一定の需要は存在する。

私はそう考えた。

そして、この「一定の需要がある」という点は、転勤の可能性がある私たち家族にとって非常に重要だった。

ゆくゆくは、地方であっても成功の可能性があるのなら、起業しようと思っていた。

仮に地方へ転勤したとしても、予約が毎日満席になるほどの需要はなくても、一定数のお客様は存在するのではないか。

現代は、どこに住んでいてもインターネットがあれば、美容に関する情報や流行を簡単に知ることができる。

東京で流行している美容サービスを、地方に住んでいるから知らない、という時代ではない。

むしろ、

「知っている。でも近くに受けられる場所がない」

という需要が地方には存在する可能性がある。

だからこそ、人口統計を確認して、その地域に学生や20代、30代などの若年層が一定数存在し、なおかつ競合店が飽和していなければ、地方であっても十分に勝負できるのではないか。

脱毛を「美容のインフラ」として考えたとき、私はそう判断した。

重要視した「時間単価」

次に、私が重要視したのが、

「時間単価」

だった。

これは、妻が従業員として働く場合ではなく、将来自分で開業した場合の話である。

美容脱毛は店舗によって料金が大きく異なる。

仮に全身脱毛を、

所要時間:2時間
料金:10,000円

とする。

単純に売上を施術時間で割れば、

1時間あたり5,000円

になる。

もちろん、これは「時給5,000円」という意味ではない。

ここから家賃、光熱費、広告費、消耗品費、決済手数料、機械代など、さまざまな経費がかかる。

予約と予約の間の時間もあれば、掃除、洗濯、予約管理、SNS、経理など、直接的にお金を生まない仕事もある。

それでも私は、この数字に大きな可能性を感じた。

会社員として働く場合、自分の時間を1時間提供したときに得られる収入には、ある程度の上限がある。

一方、自分で商売をすれば、

「自分の1時間の価値を、自分で上げることができる」

可能性がある。

私は、そこに魅力を感じた。

脱毛は、売上に対する材料費が比較的小さい

さらに、脱毛にはもう一つ魅力があった。

施術そのものに必要な消耗品が、それほど多くないことである。

もちろん、開業時には、

・脱毛機
・テナントの契約費用
・内装費
・ベッド
・洗濯機
・タオル
・備品

など、まとまった初期投資が必要になる。

しかし、一度環境を整えてしまえば、施術ごとに必要になるものは、ジェル、紙パンツ、除菌用品などの衛生管理用品が中心になる。

当然、家賃や光熱費、広告費、脱毛機の維持費なども必要なので、単純に「売上-消耗品=利益」と考えることはできない。

それでも、

「1人のお客様を施術するために必要な材料費」

という視点で見ると、比較的抑えやすいビジネスだと感じた。

そして、固定費が大きく変わらないのであれば、お客様が増えるほど、1人あたりに占める固定費の割合は小さくなる。

つまり、

集客できればできるほど、利益を残しやすくなる。

私は、そう考えた。

「自分の時間」を高く売れる仕事

脱毛を選んだ大きな理由の一つは、ここだった。

看護師のパートとして1時間働く。

会社員として1時間働く。

そして、自分の店で脱毛を1時間施術する。

同じ「1時間働く」でも、その1時間が生み出す金額は違う。

もちろん、自分で商売をすれば、お客様が来ないリスクもある。

設備投資も必要になる。

広告も必要になる。

トラブルが起きれば、自分たちで対応しなければならない。

会社員のように、出勤すれば毎月決まった給料が振り込まれるわけでもない。

それでも、

自分たちの努力次第で、自分たちの1時間の価値を高められる。

私は、そこに大きな魅力を感じた。

もう一つの理由。「子供との時間」

そして、もう一つ。

私たち夫婦にとって、収入と同じくらい大切なものがあった。

子供との時間である。

私も雇われて働く身である。

平日に子供と過ごせる時間といえば、朝の1時間と、帰宅してから子供が寝るまでの数時間程度しかない。

残業になれば、さらに短くなる。

そして、極端なことを言えば、人生はいつ何が起こるか分からない。

だからこそ、毎日を後悔なく、子供と向き合いたい。

私たちは日々の会話の中でも、

「子供と過ごせる時間は、かけがえのないものだ」

とよく話していた。

親や上司など、人生の先輩たちからも、何度となく同じような話を聞いた。

「子供はあっという間に大きくなる。」

「この前まで子供だったのに。」

「ランドセルを背負って家を出る姿が、この前のようだ。」

「仕事で子供の行事に参加してあげられなかった。」

そんな話を聞くたびに、考えさせられた。

子供と一緒に暮らせる時間は、進学などによって違うとしても、15年、18年、22年と、人生全体から見れば限られている。

さらに、そのすべての時間を一緒に過ごせるわけでもない。

学校があり、習い事があり、友達と遊ぶ時間がある。

成長すればするほど、親と一緒に過ごす時間は少なくなっていく。

特に今はまだ小学生である。

学校から帰ってくる時間も早い。

学校行事もあれば、習い事の行事もある。

だからこそ今は、できるだけ子供と一緒に過ごしたかった。

家に帰ったときに親がいない時間を、できるだけ減らしたかった。

学校や習い事の行事にも参加したかった。

そして、子供が頑張っている姿を、

録画ではなく、自分の目で見たかった。

そこで私は、妻に話した。

「自分で時間を調整できる仕事をして、子供と一緒に過ごせる時間を増やしてほしい。」

「ゆくゆくは、自宅で仕事をしながら、子供たちの帰りを迎えられるようになったらいい。」

妻も、この考えに賛成してくれた。

私たちにとって起業は、単に収入を増やすためだけのものではなかった。

自分たちで働く時間を決め、家族との時間をつくるための手段でもあった。

だからこそ、時間単価を高めることには意味があった。

1時間で生み出せる価値を高めることができれば、同じ収入を得るために必要な労働時間を短くできる可能性がある。

そして、その空いた時間を、子供との時間に使うことができる。

「たくさん働いて、たくさん稼ぐ」のではなく、
「効率よく働いて、大切なことに時間を使う」。

私たちが目指していたのは、そんな働き方だった。

妻の看護師としての経験を活かせる。

一定の需要が見込める。

地方でも展開できる可能性がある。

材料費を比較的抑えやすい。

時間単価を高められる可能性がある。

そして、自分たちで働く時間を調整し、子供との時間をつくることができる。

これらの条件を考えていった結果、

「脱毛なら勝負できるのではないか」

という結論にたどり着いた。

だから私は、妻が転職するときから、脱毛に関わる仕事を勧めていた。

転職すること自体が目的だったわけではない。

その先にある、

「妻が自分の力で効率的に稼げる仕事をつくり、家族との時間も大切にすること」

そこまでを見据えて、私は「脱毛」という業種を選んでいた。

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