03 美容サロンでの学び

妻は、2023年8月、美容サロンでのパートを始めた。

その美容サロンでは、ヘッドスパ、美容商材の販売、脱毛、酸素カプセルなどを扱っていた。

妻に与えられた仕事は、それらの施術だけではない。

接客、カウンセリング、ポップ作成、SNS運用、掃除など、美容サロンの運営に必要なさまざまな業務を経験することになった。

当時のサロンは、オーナー、従業員、妻の3人で営業していた。

来客が多い店舗ではなかったため、常に仕事に追われるような環境ではなかった。

その分、一つひとつの仕事を丁寧に教えてもらいながら、美容サロンという仕事をじっくり学ぶことができた。

その中でも、妻は特に脱毛の施術とSNS運用を中心に担当した。

脱毛の施術では、看護師として働いていた経験が思わぬところで役に立った。

脱毛には、プライベートゾーンの施術もある。

施術者にとっては、他人の身体に触れることになるため、最初は少なからず抵抗を感じる人もいる。

その点、看護師として患者の身体に触れることに慣れていた妻にとっては、それほど大きな抵抗はなかった。

これまでの経験が、思わぬところで活きた。

SNSについても、妻のこれまでの「SNSを見る」という習慣が、決して無駄ではなかった。

どんな写真が「映える」のか。

どんな字体なら目を引くのか。

どんな言葉なら興味を持ってもらえるのか。

そうしたことを考えながら、投稿を作成するようになった。

投稿作成には「Canva」というデザインツールを使用する。

最初は慣れない作業だったが、少しずつ使えるようになり、自分でSNS投稿を作れるまでになった。

こうして妻は、約半年という短い期間ではあったが、美容サロンで働きながら、SNS集客、カウンセリング、施術、接客など、美容サロンの一連の流れを学んでいった。

そして、この経験は、単に「美容の仕事を覚えた」というだけではなかった。

妻自身の中にあった、ある考え方も変わっていった。

妻は、こんなことを話していた。

看護師の資格を取得するためには、高い学費を払い、学校に通い、過酷な実習を乗り越え、国家試験に合格しなければならない。

決して簡単に取得できる資格ではない。

そして、看護師という仕事は、人の命に関わる仕事だ。

患者に寄り添い、身を尽くしてケアする。

大変な仕事ではあるが、その分、大きなやり甲斐と誇りを感じられる仕事でもある。

だからこそ、その資格や仕事から離れて、まったく違う仕事に就くことには、正直なところ、勇気が必要だった。

「これまで頑張ってきたことを無駄にしてしまうのではないか。」

そんな気持ちも、少なからずあったという。

一方で、美容サロンは、外から見ると華やかで、キラキラした世界に見える。

しかし、実際に働いてみると、それだけではなかった。

来店するお客様の多くは、肌や毛など、何かしらの悩みを抱えている。

その悩みに耳を傾け、少しでも解消する方法を一緒に考える。

そう考えると、美容と看護は、決してまったく別の仕事ではなかった。

もちろん、提供するものは違う。

しかし、

「悩みを抱えている人に寄り添い、その人が少しでも前向きになれるように手助けする」

という部分では、共通している。

看護師として培ってきた、患者に寄り添う姿勢。

そして、これまで身につけてきた医学的な知識。

それらを美容の分野で活かすことができる。

美容サロンでも、お客様の悩みを解消し、笑顔になってもらう。

そして、心も身体も少し前向きになり、これからの生活がより明るくなる。

そう考えると、美容の仕事にも、看護師とは違った形のやり甲斐がある。

妻は、そんなことを少しずつ感じるようになっていった。

新しい環境に飛び込んだからこそ、これまで知らなかった知識や経験、そして新しい考え方を学ぶことができた。

中でも、脱毛については、半年ほどの経験にもかかわらず、

「これなら一人でもできる。」

そう思えるほど、技術を身につけていた。

そして、この経験が、後に妻が自分で美容サロンを始めるきっかけの一つになっていった。

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